写真 © Katsuhisa Kida/FOTOTECA
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43base

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場所
東京都新宿区, 日本
2011

四谷三丁目の駅から3分という都心の狭小敷地である。丘を切り通した前面道路から、再び約5m登るという難点のかわりに、道路沿い両側の隣地はそれぞれ共有通路と都保有の擁壁に面し、この敷地のみ周囲から2m前面道路へせり出す。お陰でその分南面の採光と、北面の眺望が将来的にも確保されている。

家族構成は少し複雑である。施主である女性を中心に、妹夫婦、親夫婦が都心から1~2時間の場所に拠点を持ち、別々に住んでいるようで、よく集まる。それぞれ頻度は異なるが全員の都心拠点としての利便性も求められた。そんな状況の中で、プライバシーは個々の生活時間のずれによって確保されつつ、それぞれの空間が帯状に連なり畳まれ、視線が折り重なりながら1つの住宅となってゆくことを考えた。それらがL型のアングルによるユニットの集積で作られることで、現代ならではの家族像と、プロダクト的な生産方法とを重ね、ひとつの民家的な表現としたかった。

実際の空間は、数字としては小さいが、その連続感や光の濃淡、視線の編集で、感覚的な広さを確保したいと思った。H6000のエントランスを抜け、螺旋階段を登った先のH2000に満たない玄関を、頭を垂れる感覚で抜け、H4000を超えるユニットに移る。その先に崖上から駅前まで数百メートル、大きなサクラの木が連なる借景が拡がる、といった具合に、最上階の屋上庭園に至るまで、狭―広、低―高を繰り返す。使い始めてみると、当初の期待以上に、家族がよく集まっている。そんなある意味嬉しい誤算が起こっており、小さいけれど、ある程度おおらかな器になれたかなと感じている。

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