富山新聞高岡会館
北國新聞が創刊130年、富山新聞が創刊100年を迎えることを機に、富山新聞発祥の地である高岡市において、新聞社と文化センターの機能を併せ持つ富山新聞高岡会館が新たに建設された。
1893年に北國新聞が創刊され、富山新聞は1923年5月1日に「北國新聞中越附録」として創刊された。翌年「越中新聞」に改題され、戦時の休刊を経て1946年に「富山新聞」として復刊され、今日に至っている。
富山新聞高岡文化センターは富山県内20箇所に教室・スタジオを開設する富山県内最大級のカルチャーセンターであり、現在、音楽、スポーツ、ダンス、ヨガ、美術工芸、芸能、文芸、ビジネスなどの約190講座に約1000人が学んでいる。
富山新聞高岡会館は富山県高岡市の市街地中心部に位置する高岡古城公園の東側に県道を介して建つ。前田利長が築いた高岡城の城跡である高岡古城公園は、豊かな水を湛えた水濠公園であり、春には桜の名所として知られ、夏は爽やかな緑豊かな自然、秋は色鮮やかな紅葉、冬は白銀の静かなたたずまいと、四季それぞれに鮮やかな自然美を見せる。明治初期には民間に払い下げられ樹木伐採の危機にあったが、高岡町民の請願により公園として市民に開放されることになった。公園内には芸術の森や博物館、動物園などがあり、豊かな自然とともに、人々に愛されている市民の憩いの場である。周辺には市民体育館、市美術館、高岡文化ホールなどがあり、歴史と文化の薫り高い場所である。
富山新聞高岡会館の設計にあたり、眼前に広がる古城公園の水と緑に恵まれた豊かな景観と調和する美しい景観を整備するとともに、四季折々の風景を建築内部に取り込む計画とすることにより、建物を通して新聞社、文化センターの活動が市民に魅力あるものと感じられる場所となることを目指した。
計画当初、計画地の南側には隣接する旧高岡会館の建物があり、新旧の建物の高さを揃えるなどして、街の人々が慣れ親しんできた景観の雰囲気を継承することを念頭に計画を進めた。その後駐車場整備のために旧館は役目を終えたが、その存在は記憶ととともに新高岡会館へと継承されつつ、外観は透明感と奥行き感を併せ持つ独自の抽象的な表現としてデザインされた。
高岡古城公園の四季折々の変化ある豊かな景観と調和するように、親しみ易い明るい色調の石による壁面と、高岡の千本格子の街並みをイメージした可動式アルミルーバーにより外観は構成されている。
建物の西側のファサードに設けられた流線型の断面形を持つ縦型ルーバーは建物の表現であるとともに、強い西日を遮り、柔らかい間接光を内部に取り入れる装置として採用された。ルーバーの向きは太陽の運行に合わせて角度が変わるように設定されている。夜間には、格子から漏れ出す温かみのある光が街並みを優しく照らす。時間や天候によって微妙に異なる姿を演出する。
内部の構成は街並みの賑わいに貢献するように意図され、街路や古城公園側からも施設内部での活動の魅力を感じることができるように、コリドー、ロビー、ラウンジや文化センターの機能を西側の道路に面して古城公園に向けて配置した。
アプローチからコリドーに入ると2階へと誘う階段がある。階段を上がると、2階のラウンジからコリドーの吹抜けを介してアルミルーバー越しに高岡古城公園の景観が一望できる。と同時に東側へ視線を移せば水庭、東の空へと抜けてゆく連続した広がりが感じられる。ここは錆びた鉄色を背景とした水庭の煌めくさざなみや、風にそよぐ竹の梢、冬の雪化粧など、四季折々の水庭の風景を眺めながら、心静かなひと時を過ごすことができる場所である。
2階ラウンジは新聞社の多様な企画によるイヴェント、カルチャーセンターの催し物や発表の場にもなることを想定している。これまでもお茶会や生花の展示などが催されている。
水庭の東側には新聞社のオフィスがある。ラウンジとオフィスとを結ぶ回廊に新聞社が所蔵する美術工芸品、文化センターの受講生の作品の展示ができるギャラリーを設け、文化と情報の交流が生まれることを意図した。
3階には新聞社が開催するセミナーや講演会などにも利用しやすく、文化センターの教室として活用することも可能なホールを設け、小高い高岡古城公園の風景を一望できる4、5階にダンススタジオ、ヨガスタジオ、多目的の教室と応接室、6階には古城公園の梢越しに街の遠景を望めるバレエスタジオを設けた。1階には防音に配慮した音楽スタジオがある。
これからの未来へと情報と文化を継承する施設として、長く愛され使い継がれていくことを望む。
建築概要
主要用途:カルチャースクール、新聞社事務所
敷地面積:2,580.80 ㎡
建築面積:1,237.88 ㎡
延床面積:3,611.88 ㎡
階数 地上6階
構造:鉄筋コンクリート造
富山新聞高岡会館は村松基安が谷口建築設計研究所(谷口吉生)から設計協力を委託されて設計監理を担当した。
































