SCULPT
オーナーの強い要望から生まれたコンクリートの塊の実現を目指し、北側斜線に沿った斜めカット形状に意味を持たせるために、ファサードはさながらコンクリートを彫刻するかのごとく、立体を組み合わせて考えた。
導き出したのは、道路側に7度前傾した面、南北の垂直面、それらを接続している2つの三角形から成る形。不思議と神聖さを感じるその彫刻はナンキンハゼの並木坂を守るように鎮座した。
玄関で最初に目に飛び込んでくる階段は巨匠カルロ・スカルパからインスピレーションをうけ、複雑な立体をコンクリートでつくるという挑戦であり、石灰岩モルタルを研ぎだして仕上げ、階段そのものがアートとなることを目指した。
1Fにあがると、コンクリート小叩きでつくった4本の柱を中心に、両脇にリビングとダイニングを抱えたシンプルでシンメトリックな平面となっており、中央にまっすぐ外まで貫く一本の道、そしてそこに突き立てられた吹き抜け2層分の逆十字型のフレームを持つ開口部は、建物を全体をまとめあげる象徴的な意味をもつ。
2Fから北側斜線ラインに形づくられたトップライトを見ると六甲山の山並みが切り取られ、市中にいながら力強いこの建物にも負けない、大自然のダイナミズムが感じられる各部屋ひとつひとつも細部までこだわりつくり上げた。
主寝室はオーク材の壁とわずかにトーンを落とした白壁の落ち着きのある部屋で、同面積程度のパウダールームを併設した便利な空間となっている。
客室は中庭の軒天に正円に抜き取られた空を中心とした双子の和室。お互いを借景としあうこの双子はそれぞれに静謐な世界観と奥行をもたらしあって存在している。
そしてひときわ異質なのが地下階のバーである。酸化させて風合いを出した銅貼のカウンターを中心にアンティークレンガ、ベルベットカーテン、ダークミラーをつかって1970年代風の世界観を演出した。ネオンサインがあやしく輝く。
オーナーのこだわり、建築家のデザインの妙、それらが何度も化学反応を起こして行きついたこの建物はこの先も堂々たる存在感を放ちそこに存在し続けるだろう。
- 年
- 2020













